学びの順序

【学びの順序】
Aさんが犬を飼い始めた時の話です。
犬を飼うのは初めてではなかったのですが、今回は最初からきちんとしつけて、賢い犬に育てようと張り切っていました。
犬の飼い方の本には、「散歩のしつけは最初が肝心です。飼い主より先に行こうとしたら、進む向きを変えたりリードを引っ張って「ダメだ」と教える必要があります。」などということが書いてありました。
Aさんはその通りにしました。
初めて外に出た子犬は大興奮で、色々な方向に走ったり跳ねたり、他の犬に吠えたりと、子犬らしくしていました。
Aさんは子犬が走ったり跳ねたりするたびに「ダメ!」と叱りました。
すると子犬は次第に元気が無くなり、しまいには動こうとしなくなりました。
仕方なくAさんは子犬を抱き抱えて家に帰りました。
翌日、散歩に行こうとリードを持って行くと、子犬は怖がって逃げてしまいました。
リードをつけられることや散歩に行くことは怖いことだと学習してしまったのです。
この犬が散歩を好きになるまでには、長い時間がかかりました。
Aさんは学びの順序を間違えてしまいました。
「散歩のときには飼い主よりも先に歩かない」とか、「よその犬に会っても吠えたらダメ」ということよりも先に、もっと大切なことを学ばせるべきだったのです。
それは「散歩は楽しい」「飼い主と出かけるのが大好き」ということです。
これは子育てにも当てはまります。
まず、楽しむことや好きになることが大切であり、上手にできることや正しくできることは、その後でいいのです。
旅行に行ったり、ショッピングに出かけたら子供は大はしゃぎです。
危険なことは止めなければなりませんが、多少大人に迷惑をかけてもいいではありませんか。
世界を見て、世界に触れ、彼らは成長していくのです。
普段の食事もそうです。
スプーンやお箸を上手に使えたり、バランスよく食べることや、牛乳をこぼさないことよりも、食卓が楽しいことの方が何倍も価値があると僕は思います。
礼儀作法は大人が目の前で見せていれば必ず出来るようになります。
僕たちがまず子供に教えてあげなければならないことは、「この世界は楽しい」ということだと思うのです。