相手の気持ちを考える
【相手の気持ちを考える】
指導者の立場で、生徒の倒立を支えているシーンをイメージしてください。
生徒の体が前方(背中の方向)に傾いているとしたら、正しい姿勢に戻すためにどのようにサポートをするでしょうか?
普通に考えれば、体が前に倒れているのだから、背中側から押すことで正しい姿勢に戻そうとするでしょう。
しかし、僕の理論は逆です。
このケースなら、お腹側から押すことが重要になります。
細かい理屈は複雑なので省きますが、生徒は「押されている方向」に体重をかけたくなるからです。
その方が安心できるのです。
もう一つ、鉄棒の前回りを例にすると分かりやすいです。
前に回らせたいからといって、背中を押されたら生徒はどう感じるでしょうか?
怖くて前に回転などできません。
ですから胸を押す(支える)のです。
そうすれば生徒は「前に倒れても大丈夫」という気持ちになります。
柔軟でもそうです。
後ろからグイグイ押すのも方法の一つですが、押されている方は激痛です。
よほどの精神力を持っている子でなければ、柔軟嫌いになるでしょう。
そういうのは選手になってからでいいのです。
とは言え、どんな立場であれ、生徒自身は「柔らかくなりたい」と望んでいます。
そして自分の耐えられる範囲で痛みを受け入れる覚悟もできています。
ならばどうするかというと、姿勢が変にならないようにサポートをし、押すというより引くイメージで補助をします。
そして生徒自身に限界を越えさせるのです。
もちろん、押して欲しいという要望があれば押します。
さて、何が言いたいのかというと、大切なのは相手の気持ちになって考えるということです。
これは子育て、教育、人間関係の様々な場面で必要なことです。
こちらの要望や都合を押し付けるために、相手に行動を強制しても望む成果は決して得られません。
相手はどうしてほしいと望んでいるのか、どうすれば相手は安心できるのか、
相手の気持ちに寄り添い続けた結果、お互いにとってより良い成果が生まれるのです。
相手の気持ちを考えるのは、ただ単に想像するのとは違います。
性格を知り、価値観を知り、その時の行動や言動を観察し心理を読むということです。
僕はこれからも、指導というあくなき心理戦を楽しみたいと思います。