叱ることに意味はあるのか
【叱ることに意味はあるのか】
僕は常々、指導において「叱る」行為は不要だと訴えています。
体操教室をオープンした3年前からも、一度も生徒を叱ったことはありません。
人は叱られると「恐怖」などのネガティブな感情に支配されます。
この時脳では脅威から逃れるために、生存本能によって2つの行動パターンを選択します。
「闘う」か「逃げる」かです。
これは脳のメカニズムなので抗えません。
また、叱られ続けることで脳が萎縮する(思考能力が低下する)ことが科学的に分かっています。
つまり、叱る分だけマイナスなのです。
とはいえ、叱ることが無意味かと言えばそうではありません。
危機回避としては非常に効果的です。
例えば幼い子供が道路にとび出しそうになっていたら、「こら!」と大きな声で叱ることで、行動を抑制することができます。
ただし、行動を抑制した後に重ねて叱る必要はありません。
「さっきは大きな声を出してごめんね。道路に飛び出すのはとても危険だから次から気をつけてね。」と穏やかに伝えます。
「何やってるの、危ないでしょ!道路に飛び出したらどうなると思ってるの!」と叱り続ければ、最も肝心な学びが阻害されてしまいます。
繰り返しになりますが、叱られている時の脳は「闘う」か「逃げる」かしか考えられないのです。
ですから、伝えたい物事がある時は、相手を恐怖させてはいけません。
相手を落ち着かせて、相手の目を見て、優しい口調で伝えるのが良いでしょう。
このように「叱る」という手段は、あくまでも危険を回避する場面では効果を発揮すると言えます。
さて、こんなことを言っている僕も昔は生徒を叱って育てていた時期がありました。
なので叱ってしまう人の気持ちはわかります。
その人の悪行を正したい、さらに良い方法を提示したい、厳しくすればそれだけ良くなる、優しくすればダメになる、全ては相手を変えるために叱っていました。
しかし知識を得た結果、これが逆効果だったことが分かりました。
叱ることをゼロにする必要はありません。
先ほどの例にように使い所はあるのです。
その上で、価値ある学びのためには、穏やかな教育こそが大切だということを忘れてはいけません。