暗示は使い方次第で
【暗示は使い方次第で】
1930年代に行われた実験をご紹介します。
それは、健康な人間を暗示によって病人にしてしまうというものです。
被験者をAさんとします。
まず、一人がAさんを訪問して「どこか悪いのかい?顔色が冴えないようだけど」と暗示をかけます。
Aさんは「別に何ともないよ」と答えます。
やがて二人目が訪れ、同じ暗示をかけます。
するとAさんは、「なんとなく気分がすぐれない」と答えます。
さらに三人目が同じ暗示をかけると、はっきりと自分は病人なんだと言い、その症状を呈すようになるというものです。
確かに、別々の他人から三回も言われたら「間違いなくそうだ」と思ってしまうかもしれませんね。
さて、「こんなことは実際には起きない」と思ったら大間違いです。
例えば、子供に「あなたは人見知りだ」という暗示をかけてしまうことがあります。
前提として、子供の性格は十人十色ですから、積極的な子もいれば、消極的な子もいます。
それでも子供というのは、親以外の他人に対して「警戒心」を持つのが普通であり、成長過程で徐々に社会との関わりを大きくしていくものです。
これは、生き残るための本能であり、実に健康的な心の働きと言えます。
ですが、初対面の人とすぐに打ち解けることが出来ない我が子を見て、「すみません、人見知りで」と言ってしまうことがあります。
子供は「人見知り」の意味をこう捉えるでしょう。
「自分は初めての人の前では緊張してしまって、話せなくなってしまう。それを「ひとみしり」と言うんだ。」と。
本当は正常であるはずの心の反応に、あたかも「悪いこと」のような解釈をしてしまうのです。
そして、最初は親から言われていた「この子は人見知り」という暗示が、次は親戚から言われてしまうかもしれません。
「○○ちゃんは、人見知りだからね」と。
さらに、ご近所さんから「あら、人見知りしてるの?」と言われて確信するのです。
「私は、人見知りな性格なんだ」と。
もしかしたらそれは、社会生活において足かせとなる思い込みかもしれません。
このように、僕たちは他人に対して簡単に暗示をかけることが出来てしまいます。
しかし、一つ忘れてはいけないことがあります。
僕たちは他人に対して、良い暗示をかけ続けることもできるということです。