不死身に生きがいはあるのか

【不死身に生きがいはあるのか】
『死とは何か』という哲学書があります。
「死はなぜ悪いのか」「そもそも死は悪いのか」「ならば不死は良いことなのか」「自殺に正当性はあるのか」など、あらゆる視点から『死』というものを深く考えていく本です。
僕はこの本がとても気に入っているのですが、今日はそんな『死』あるいは『生』に関する不思議な生物のお話をしたいと思います。
「ベニクラゲ」という名前を聞いたことはあるでしょうか。
このクラゲはとても面白い生態を持っています。
そもそもクラゲの生態が面白いので、簡単に説明します。
クラゲの卵は、岩などに付着して植物のように芽を生やします。
この状態を「ポリプ」と言います。
その後分裂しながらお椀のような形に成長し、時期が来ると岩から離れて海を浮遊します。
そして成長して卵を産むと、クラゲは死んでしまいます。
これが普通のクラゲの一生です。
しかし、ベニクラゲは違います。
ベニクラゲは成長して大きくなり、寿命を迎えて死んでしまったかと思うと、また小さくなって新たなポリプとなるのです。
卵を産むのではなく自ら若返って1から人生をやり直す、まさに不死身の生物です。
クラゲは恐竜も魚類も存在しなかったはるか昔、5億年も前から地球に存在していたと言われています。
理論上は、5億年間ずっと生き延びているベニクラゲもいるとか。
なんという壮大なスケールでしょうか。
僕たち人間からすれば、多くの生物の寿命は短く儚いものです。
しかしベニクラゲから見たら、僕たち人間の一生などほんの一瞬の出来事なのかもしれません。
人類は長い歴史の中で、「死とは何か」「生きるとは何か」「時間とは何か」「幸せとは何か」などと、悩み考える脳を手に入れてしまいました。
クラゲは5億年も、ただ浮かんでいるだけだというのに。
チャップリンは「クラゲにも生きがいがある」と言いました。
まさに、彼らにとっては生きていることが生きがいなのかもしれません。
生きがいとは何なのか、そんなことが頭を過ったお話でした。