苦手は克服できるのか

【苦手は克服できるのか】
(虫の話なので苦手な方はご注意ください)
とにかく高いところに登りたかった小学生の頃の僕は、祖母の家の屋根や、ブロック塀が大好きでした。
ある日いつものように、身長より高い灰色のブロック塀にジャンプで手をかけると、左手の薬指と小指にぬるっとした生暖かい感触がありました。
塀の淵を歩いていた、まるまる太った黒い毛虫を素手で潰してしまったのです。
その緑色の内容物を目の当たりにした僕は、しっかりとトラウマになりまして、以来20年、芋虫はもちろん、虫全般を避けて生きてきました。
時は流れ、大人になった僕は、ある時冷静に考えてみました。
「毛虫が一体何をした?故意でないにしろ命を奪っておいて、それでトラウマになるとは、なんて自分勝手なんだ」と。
とても悔しい、申し訳ない気持ちになりました。
そこで、虫が大好きだった少年時代の自分を思い出し、息子たちと一緒に様々な虫や小動物と触れ合いました。
最初はダンゴムシやテントウムシを触るのがやっとでしたが、やがてバッタやセミ、カマキリ、ザリガニも素手で捕まえられるようになりました。
今では種類にもよりますが、蝶の幼虫、いわゆる芋虫に触るのも頑張ればいけます。
なんでこんなことを頑張っているのか、自分でもよく分かりません。
自分の弱さを克服したいという思いからなのか、意地のようなものなのか。
そもそも苦手を克服することに意味はあるのか。
きっと、どんなに頑張ってもトラウマは消えません。
あの時の感触が、20年以上経った今でも鮮明に左手に残されています。
脳の機能に、一周回って感動すら覚えます。
一つ言えるのは、僕は苦手を少しづつ克服していく中で、達成感を得たということです。
得意なことをしていて楽しいのは当たり前です。
しかし、苦手と向き合うのも案外楽しかったりします。
そんなことを、体操の練習の中でも子供たちに伝えていけたらと思います。