過保護と過干渉

【過保護と過干渉】

育児において、この二つはどちらも良い印象では語られません。

そもそも、意味の違いを知らない人もいるかもしれません。

児童精神科医の佐々木正美先生によれば、子供を育てる上で過保護は何の心配も無いそうです。

むしろ、本当の意味で過保護な育児をしている親はほとんどいないと言います。

過保護というのは、子供の望みを叶え過ぎてしまうことです。

「遊んで」と言われたら、すぐ遊んであげる。

「絵本を読んで」と言われたら、気が済むまで読んであげる。

「今日はハンバーグがいい」と言われたら、ハンバーグにしてあげる。

これは、実際にはほぼ不可能ですよね。

「今は洗い物をしているから後で遊ぼうね」

「今日はカレーを作ってしまったからハンバーグは明日ね」など、

子供の要望を完璧に叶えるということは、容易ではありません。

では、このような過保護な育児を、仮に実現できたとしましょう。

「そんなことをしたら、子供はダメになる」と思うでしょうか?

実は違います。

欲求が十分に満たされた子供は、自立心が芽生えるのです。

人の欲求には段階があります。

「自立」=「自己実現の欲求」というのは、最も高度な段階です。

その欲求を刺激するためには、その手前にある「承認欲求」や「社会的欲求」などが満たされていなければなりません。

この話は詳しくはしませんが、要は本当の意味で過保護に育てられた子供は、自己実現を求めて自ら行動するようになるということです。

一方、問題があるのは「過干渉」です。

過干渉とは、子供が望まないことをやり過ぎてしまうことです。

例えば、子供が忘れ物をしないように親が準備をしてあげたり、子供同士のトラブルに親が介入したり、子供の好みを無視して実用性のある物事に興味を向けようと仕向けたりすることです。

親の「こうなってほしい」という気持ちは誰にでもありますが、それが表に出過ぎてしまった状況こそが、過干渉育児なのです。

つまり、過保護な育児と過干渉な育児は、似ているようで真逆な姿勢だということが分かります。

過干渉は、はっきり言って子供をダメにします。

自分の欲求が満たされず、いつも他人に介入されている状況では、心が不安定になっても仕方ありません。

自立心や主体性というのは、やりたいことを伸び伸びとやっていくことで育つものです。

けれども、「やらなければならない」ことばかりを押し付けられていては、子供は「自分が本当は何をしたいのか」がわからなくなってしまうのです。

佐々木先生の診察室に来る子供たちの中に、過保護で育てられた子は一人もいなかったそうです。

行動に問題がある子は皆、過干渉で育てられていたのです。

佐々木先生は以下のように話します。

育児が楽しくなるコツは、「できるようになる時期は自分で決めていいよ。それまで待ってあげるからね」という気持ちを持つことだと。

過保護な育児というのは、「待ってあげるよ」というメッセージであり、どれだけ面倒でも親がサボらないという決意です。

「過保護」になる必要は無いと思いますが、子供の要望を可能な限り叶えるという姿勢は、悪いことではありません。

私は、それが分かっただけでも、とても心が軽くなりました。

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