直視できなかった本

【直視できなかった本】
最近読んだ中に、読み終えるのにひと月以上かかった本があります。
理由は、少しずつしか読み進めることができなかったからです。
苦しくなり、辛くなり、恐ろしくなり、気がつくと別の本に逃げてしまうのです。
序章においては、開くたび涙が流れました。
強烈な内容です。
なぜ私が、それほどまでに心を揺さぶられたのか。
なぜ、直視できないほどに辛い感情を抱いたのか。
それは、私の人生において目を背けたくなる現実を、突きけられ続ける内容だったからです。
この本は、私がこれまで出会った中で最も厳しく、それでいて愛に溢れた本だったかもしれません。
この本は、社会を批判し、そこに生きる人間を批判し、私の生き方を批判し、著者自身を批判しました。
それでいて、確固たる正解も、行き着くべき未来も提示してはくれません。
無理やり結論を言うのであれば、「どうしようもないものを、どうにかしようと抗い続ける生き方」を示す本です。
その書籍の名は、『無痛文明論』(森岡正博)。
何が書かれているか、それを一言でまとめることは私にはできません。
なので、本文「はじめに」にある文の一部を引用したいと思います。
そこには、こう書かれています。
”快にまみれた不安の中で、よろこびを見失った反復のなかで、どこまで行っても出口のない迷路のなかで、それでもなお人生を悔いなく生き切りたいと心のどこかで思っている人々に、私はこの本を届けたいと思う。”
読み終えた私の感想を言えば、これを読んで人生が豊かになるという、気持ちの良い内容ではありません。
グサグサと何度も心をえぐられた上で、「あとはあなた次第だ」と見放されて終わりです。
もしかしたら、そんな寂しさを紛らわせるために、私はこの文章を書いているのかもしれません。
しかしながら、私の言葉にならない心の叫びを、この世界に対する違和感を、無痛文明論は代弁してくれたような気がしました。
愛と厳しさに溢れたこの作品、もし機会がありましたら、皆様も手に取ってみてください。


