子供に真実を語ってほしいと思ったら

【子供に真実を語ってほしいと思ったら】
4歳のアーサーは、あわただしく居間に駆け込んできた。
「おばあちゃんなんて、大嫌い!」
驚いた母親はこう答えた。
「だめよ、そんなことを言ったら。あなたは、おばあちゃんのことが大好きでしょう!
この家では、だれも嫌っちゃダメなの。
だって、おばあちゃん、あなたにプレゼントをくれたり、いろいろなところに連れて行ってくれたりするでしょう。
なのに、どうしてそんなに恐ろしいことが言えるの?」
しかし、アーサーは言い張った。
「ううん、ぼくはおばあちゃんが嫌いだ。もう顔も見たくない!」
うろたえた母親は、もっと強力な教育手段を用いることにした。
アーサーをたたいたのだ。
それ以上罰せられたくないアーサーは、ころりと口調を変えて言った。
「ほんとうはおばあちゃんのこと大好きだよママ」
それに対して母親は、アーサーを抱きしめてキスをしながらこう言った。
「いい子ね」
さて、このやり取りから、幼いアーサーは何を学んだでしょうか。
母親に対し、真実を告げることは危険だ、ということです。
本当のことを言えば罰せられ、嘘をつくと愛される。
真実は痛い。
ママには、ママが聞きたがっていることだけを言うようにしよう。
子供は時に、親が動揺するようなことを口にします。
誰かを「嫌いだ」と言ったり、丹精込めて作った料理を「まずい」と言ったり、遊びに来たのに「つまらない」と言ったりします。
そんな時に、「なぜ、そんなことを言うんだ!」と食ってかかっても、何の解決にもなりません。
アーサーの母親は、どんなふうに息子の話を聞けばよかったのでしょう。
例えば、次のように言って、アーサーの発言を認めてあげればよいのです。
「あら、もうおばあちゃんのことが好きじゃないの?
おばあちゃんはどんなことをして、あなたを怒らせたんだろう。
教えてくれる?」
そうしたら、アーサーはこう答えたかもしれません。
「ノラ(妹)にはプレゼントを買ってきたのに、僕には買ってこなかったんだもん」
もしも私たちが、子供に正直に話をしてほしいと思っているのなら、楽しい真実だけでなく、つらい真実にも耳を傾けるための心の準備をしておかなければなりません。
肯定的な気持ちであれ、否定的な気持ちであれ、矛盾した気持ちであれ、受け止めなければなりません。
けっして、自分の気持ちに嘘をつくようなことを奨励してはならないのです。
子供が表現する感情に、大人がどう反応するかによって、子供は正直でいることが得策かどうかを学びます。
あなたは、誰かに「本当の気持ちを聞かせて」と言われた時、どんな人になら真実を話そうと思うでしょうか。
きっと、普段から自分の話を否定せずに聞いてくれる人です。
都合の良いことにしか耳を傾けない人に対して語るのは、真実に見せかけた巧妙な嘘なのです。


