もしも声を失ったら

【もしも声を失ったら】
ある女性の話です。
彼女はある日、声が擦れ始め、やがて声が出なくなってしまったそうです。
すぐに入院し、手術をすることになりました。
手術は無事に済み、幸運にも声は元通りに出るようになりました。
家に残してきた子供のことを案じ、1日も早く退院したいと思っていました。
そのうちお医者さんから「もう帰ってよろしい」と言われ、彼女は喜々として家に帰りました。
家に帰ると、さっそくあちこちの友達へ電話をし、「私、声が出るようになったわ。私ってわかる?」と伝えました。
今度は家の前に出て、いつも見かけながら声をかけたことが無いおじいさんに、思い切って「おはようございます」と声をかけてみました。
すると、おじいさんはとてもいい笑顔で「おはようさん」と返してくれたのです。
彼女は、こんな幸せが自分の喉に隠れていたのかと、初めて知らされたのでした。
病気などしない方がいい、怪我などしない方がいい、それは間違い無いでしょう。
しかしこの女性が、声が出せる喜びをこれほどまでに強く実感できたのは、一度声を失うという壮絶な経験をしたからこそです。
毎日当たり前のように声を出している我々には、話を聞いて想像することしかできません。
当たり前のことに感謝し、幸せを感じるというのは、それほど難しいことなのだと思います。
声だけに限りません。
歩けること、見えること、聞こえること。
実際に失うほど悲しいことはありませんから、「もしも失ったら」と想像するだけで良いのです。
すると、自分がどれだけ恵まれているか、あるいは粗末にしているかに気づけます。
せっかく、ご先祖様から受け継ぎ、ご両親から授かった体です。
最期の瞬間まで、使い切ろうではありませんか。


